ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

沈黙

○遠山家/縁側(昼)
地方の旧家の縁側。
縁側の外には田園風景が広がっている。
遠山昭義(71歳)と遠山道明(8歳)が縁側に座っている。
道明が昭義の顔を見つめている。
昭義は微笑んでいるような、悲しんでいるような、複雑な表情を浮かべて、道明を見る。
昭義は首を横に振り、道明の頭を優しく撫でる。
道明は微笑む。
昭義は複雑な表情のまま道明を撫でている。
画面がフェイドアウトする。

○同/居間(昼)
道明(46歳)が名刺を見ている。名刺には「毎朝新聞 社会部記者 工藤孝弘」の文字。
道明の前に工藤孝弘(32歳)が座っている。
工藤「終戦の特集として太平洋戦争の南方戦線をテーマに取材をしておりまして・・・」
道明「はぁ」
工藤「ついては、道明さんのお爺様に当たる昭義さんのことについてお話を伺わせていただきたく」
道明「しかし、電話でも、お話をさせていただいたように、爺さんからは、戦争の話は何も聞いてませんし、資料といっても」
工藤「しかしですね、当時の関係者に取材をすると、昭義さんのお名前を挙げる方が」
道明「本当ですか?」
工藤「ええ」
道明「南方戦線?」
工藤「日本軍の戦いの中でも、もっとも悲惨で過酷だった戦地の一つです」
道明「戦争には行かなかったって・・・」
工藤「そんなことはありませんよ、同じ部隊だった方の証言があるんですから」
道明「爺さんは、戦場で何を・・・」
画面がフェイドアウトする。

○同/居間(昼)
置かれている電気製品や家具などから、昭和の時代であることが分かる。
道明(8歳)と弟、母親、昭義がテレビを見ながら冷や麦を食べている。
テレビで終戦特集の記念番組が始まる。
昭義が箸を置き、立ち上がる。
昭義「ごちそうさん
道明の母親「もう大丈夫ですか?」
昭義「うん、ありがとう」
昭義が縁側へ向かう。
道明が冷や麦をすすって、昭義の後をついていく。
道明「ごちそうさま」
道明の母親「道明、行儀悪いよ」

○同/縁側
昭義が縁側に座っている。
隣に道明が座る。
道明「ねぇ、爺ちゃんは戦争行ったことある?」
道明が昭義の顔を見つめる。
昭義は微笑んでいるような、悲しんでいるような、複雑な表情を浮かべて、道明を見る。