ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

怨魂師(4)

○岩崎家/外観(昼)
堂々とした旧家造りの邸宅。

○同/大居間(昼)
岩崎幸之助(67歳)と阿部と橘が向かい合って座り、話をしている。
橘は木箱を(両手で)手にしている。
岩崎「準備は整ったんだね」
阿部「ええ」

○同/台所(昼)
使用人Aが使用人Bが片づけをしている。
使用人A「夜の件、先に確認しとかなきゃ、旦那様は?」
使用人B「だめ、いま来客中、ほら、あの」
使用人Bが手を合わせて念仏を唱えるポーズをする。
使用人A「また?別の拝み屋さん?」

○同/大居間(昼)
岩崎と阿部、橘が話をしている。
岩崎「あなた方がどういう方法を取るのか分かりませんが・・・」
阿部「特殊な方法です、今までは、どのような?」
岩崎「色々、お願いしました。祈祷師、お坊さん、スピリチャル・カウンセラー、霊能者」
阿部「呪文、祈り?」
岩崎「ええ、そうです」
阿部「私たちとは違う方法ですね」
岩崎「それ以外、どういうやり方が・・・」
阿部「怨念が強いと、人の力で鎮めることはできないんです」
岩崎「だったら、なにを使って?」
阿部が橘が手にしている木箱を開ける。
阿部が木箱の中から紫の布包みを大事そうに取り出す。
阿部が包みを少しほどくと人型が見える。
阿部「これです」
阿部が橘に目で合図をする。
橘「この人型には岩崎様の家に憑いている怨霊を鎮めることができる強力な怨念がこめられているんです」
岩崎「別の怨念?」
阿部「怨霊を使って怨霊を退治する」
岩崎「大丈夫ですか、そんな・・・事態が悪化するていうことは」
阿部「怨霊といっても、元々は人です。礼儀を持って接すれば話が通じない存在ではありません」
橘「今は神様として奉られる菅原道真平将門も最初は怨念だったという話、ご存知ですよね?きちんと敬えば、悪ではなく善に働いてくれるんです」
岩崎「そう・・・ですか」

○同/外観(夕方)

○同/大居間(夕方)
簡易の祭壇が作られている。
祭壇の中央に人型が置かれ、その前に阿部が立っている。
離れた場所で橘と岩崎が阿部を見ている。
阿部が小声で唱え言葉を発し始める。
阿部の意識が集中しているのが分かる。

○地獄
赤く燃える岩肌が覆う土地。
鬼のような怒りの形相を浮かべる早川が立っている。
早川の前に阿部が歩み寄る。
阿部「良かった、お会いできて」
早川「どうした?」
早川が口を開けると黄色い煙が漏れる。
阿部「怨念を鎮めていただきたく参りました」
早川「なぜ、俺が?」
阿部「成仏を求めているのでしょう?」
早川が阿部を睨む。
阿部「怒り、怨み、憎しみから逃れようと、あなたは命を絶った。しかし、あなたが変わらない限り、この地獄から抜け出す道はありません」
早川が阿部を睨んでいる。
早川「あぁ、思い出した、思い出したぞ、貴様、俺を・・・」
阿部「そうです、生前、お会いしていました」
早川が阿部の肩を掴み、引き寄せる。
早川「貴様、俺を成仏させると・・・」
阿部「ええ、約束しました、その約束を果たしに来たのです」
早川が阿部の首に手をかける。
阿部「苦しいでしょう?怨みの中に生きるのは」
早川「畜生」
阿部「苦しみから抜け出すには、あなたが変わるしかない」
早川の手が緩む。
阿部「怒りをぶつける相手を用意した」
早川「なに?」
阿部「怨みを抱えたまま命を落とした者だ、君のようにね」
早川「それを?」
阿部「その怨念が、代々、ある一家を祟っている。君の力で、その魂を、ここに連れてきてほしい」
早川「連れてくれば、俺は・・・」
阿部「成仏?」
早川「ああ!」
阿部「この後、何度か人助けを依頼する。徐々に徳を積めば地獄から抜け出せる」
早川「本当か?本当なんだな!」
阿部「ああ、良い行いをする。苦しみを終わらせる方法は、それ以外にない」
早川が阿部の体を離し、じっと考える。
早川「わかった」
阿部「ありがとう」
早川「さぁ、どうすれば良い、教えてくれ」
阿部「この家を祟る女の悪霊がいる。江戸時代の頃かな、それから代々、女性に不幸が続いているようだ」
早川「その悪霊を連れてくれば」
阿部「ああ、ここへ」
早川「今は、どこに?」
阿部「この家の娘に憑いている」
早川「暴れてるのか?」
阿部「ああ、同級生を殺したそうだ」
早川の表情が、より険しくなる。
早川「絶対に連れてきてやる」
阿部「頼もしい」
早川が目をつぶると、炎が舞う。

 

(続く)