ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

こころ

○港町(夜)
海に面した町並み。
暴風雨。
ところどころで道路は冠水し、木々が折れそうなほど風が吹いている。

○竹村家/外観(夜)
二階建ての家屋。

○同/室内(夜)
二階の部屋。
窓から暴風雨の町の様子が見える。
竹村亮(24歳)がパソコンの前に座ってスマートフォンからツイッターに投稿している。
パソコンのモニタには(主観型)戦争ゲーム。
ツイッターには「×季節ハズレ ○期待ハズレの台風だったな」という書き込み。
亮がゲームを再開する。
モニタ内では殺戮が繰り広げられる。
突然、バリバリという爆音が響き、部屋が揺れる。
パソコンやテレビなどの電気が止まり、街全体が真っ暗になる。
亮が驚き、床を転げる。
亮が部屋のドアを開ける。
雨風が吹きさらしになっている。
亮がポケットからスマホを取り出し、画面を周りに向ける。
家に何かが直撃したことがわかる。
隣の家から懐中電灯の光。
男Aの声「大丈夫か!」
亮が呆然としている。
家がきしむ音。
亮が我に返る。
亮「助けて!」
男Aの声「どこだ!」
亮「二階!」
懐中電灯の光が亮に当たる。
男Aの声「他には?」
亮「一階に」
男Aの声「降りれるか?」
亮「なんも見えない」

○同/一階
暴風雨の中、男性数名が梯子を押さえている。
半壊した家の二階から、亮が降りてくる。
男たちが亮を引き寄せ、家から離す。
男B「警察も消防も遅いな」
男C「来たら、あんちゃんが判断しな」
亮「判断?」
男たちが家を見る。
男A「壊すんだったら、壊しちまわないと、風で飛ばされると被害が出る」
亮「父さんに」
男たちが顔を合わせる。
男B「寝室直撃だ」
亮「うそ」
男A「あんた、一人息子?」
亮「はい」
男C「なら、もう、あんちゃんが家の主だ、決めろ」
パトカー、消防車のサイレンの音。
パトカーのスピーカーから避難命令を告げる音声。
パトカーの音声「地域一帯に避難命令が通達されました。これは勧告ではなく、命令です。皆さん、速やかに山上小学校の体育館へ避難お願いします」
パトカー、消防車が到着する。
警官、消防士が亮の家の前に集まる。
男A「遅いよ、お巡りさん」
警官A「東京から指示が来てたもんで」
警官B「この家の住民は?」
亮「はい」
警官A「他には?」
男Bが懐中電灯の明かりを損壊していう方に向ける。
明かりの先で消防士が作業をしている。
警官B「生存者は?」
消防士Aが×のサインを出す。
警官A「避難所までパトカーで連れていく。そこで話を聞こう」
男C「俺たちは、これでいいかい、気を落とすなよ」
男たちが去っていく。
警官B「待って下さい、家に戻るんじゃなくて、避難を」
男B「大丈夫だよ、ウチは」
警官A「命令です、家族を連れて、避難を」
男たちが振り向かず去っていく。

○山上小学校/体育館内(朝)
数世帯の家族が避難している。
窓からは朝日が差し込んでいる。

亮が窓際に座り、外を見ている。
雨は上がり、雲のない空。

自衛隊のヘリコプターが行き交っている。

男性の声「疲れたかい?」
亮が振り向くと警官Cが立っている。
警官C「ごめんな、朝まで。どうしても確認しなきゃいけない手続きがあるんで」
亮「はぁ・・・」

亮が外を見ると、帰ろうとする避難者を自衛隊員が止めている光景。

亮「うち以外にも被害あったんですか?」
警官C「ん?」
亮「こんなに自衛隊来て」
警官C「そうだなぁ」

町中で火柱と噴煙が上がる。
遅れてドカーンという爆発音。

避難者たちが一斉に立ち上がり、窓に駆け寄る。

自衛隊員たちが号令を掛け合う。

亮「なんだ?」
警官C「ガス爆発?」

窓を見ていた避難者Aが声を上げる。
避難者A「海、戦艦がおるぞ!」

沖合に軍艦2艘が巡航している。
軍艦からは複数の上陸艇が降ろされ、陸に向かって進んでいる。

軍艦から発射されたミサイルが自衛隊のヘリコプターに命中し、ヘリコプターが撃墜される。

警官C「なんだ、こりゃ・・・」

避難者B「戦争だ」
避難者たちが「戦争」「戦争が始まった」と騒ぎだす。

自衛隊員たちが体育館に入ってくる。
自衛隊員A「皆さん、ここは安全です、落ち着いて下さい」
警官C「あれは何ですか?」
自衛隊員B「我々が責任を持って阻止します」
避難者たちが自衛隊員に駆け寄る。
避難者C「まだ避難してない者が町に、たくさんおるぞ」
自衛隊員A「大丈夫です」
避難者D「うちとこの町内からは、うちの家族しか避難してねぇ」

亮が皆のやりとりを見つめている。
彼方から銃声が聞こえる。
体育館の皆が息を止め、館内が静かになる。
亮が窓から外を見る。
彼方からの銃声音。
亮が徐々に後ずさりする。

○町並み(夕方)
夕焼け空の町並み。

○山上小学校/教室内(夕方)
子供や女性たちが片隅に息を潜めて座っている。
遠くで銃声が聞こえる。

○同/体育館内(夕方)
漁師包丁を手にした男たちが車座になって話をしている。
男たちの中には服や包丁に血がついている者もいる。
亮が少し離れた場所に、体育座りをして一人で座っている。
話をしている男の一人が、包丁を持って、亮の前に歩いてくる。
男1「暗くなったら、行くぞ」
亮が顔をあげる。
亮は不安そうな表情。
男1「男手が足りないんだよ、こんだけしか残ってねぇんだから」
亮「僕、そんなこと・・・」
男1「やるんだよ、町山の親父の仇をとるんだよ」
亮「仇って・・・」
男1が亮の目の前に包丁を置いて去って行く。
突然、地面が揺れ始める。
亮や男たちが周囲を見回す。
地震が起き、体育館がきしむ。
揺れが大き過ぎて、亮たちは立ち上がることすらできない。
揺れがおさまる。
男2「子供たちは」
男たちが立ち上がり、教室の方へ向かう。
亮が一人残される。
亮が立ち上がり、扉へ向かい、外を見る。

夕焼けが水平線に沈もうとしている。
水平線が大きく盛り上がっているのがわかる。
津波が来ている。

亮は、外に向かって、ゆっくりと歩き出す。

水平線の津波が近づいて来る。

亮は海岸へ向かって、下って行く。

かぐや姫

○公園(夜)
小高い丘の上にある人気のない公園。
超望遠レンズを装着した一眼レフのカメラが三脚の上にセットされている。
内瀬巧(19歳)が手にしたスマートフォンで、一眼カメラを撮影している。
巧が、いろいろな角度で一眼カメラ撮影をする。
巧がスマートフォンをポケットにしまい、一眼カメラを扱い始める。
一眼カメラは、デジタルカメラではなく、フィルム式のカメラである。
巧「全然、わかんねぇ」
巧の一眼カメラの操作は、全く要領を得ない。
巧がファインダーを覗き込むが、フォーカスが合わせられない。
巧「どうなってんだよ」
女性の声「見える?」
巧がファインダーから顔を離す。
巧「いやぁ」
女性は唯野圭子(41歳)である。
圭子「もう少しで全部隠れそうよ」
巧「昔のカメラなんで、全然使い方がわかんなくて」
圭子が一眼カメラを見る。
圭子「懐かしいカメラ」
圭子が一眼カメラに近づき、まじまじと見る。
巧「別に月食じゃなくてもいいんで、サンプルが撮れれば」
圭子は一眼カメラから目を離さずに答える。
圭子「サンプル?」
巧「これ、昔、父さんが使ってて、この間、似たようなのが、オークションに出てたのみたら結構高く売れてたんで、こんど売りに出そうかと思って。撮影サンプルがないと高く売れないでしょ、今でも動くっての見せないと」
圭子「お父さんが売ってもいいって?」
巧「父さん死んだんで、持っててもしょうがないし」
圭子が顔を上げる。
圭子「大事な形見じゃないの」
巧「自分にこういう趣味ないし、母さんも父さんの趣味には、いつも困らされてたから」
圭子が三脚の足下に置かれたカメラケースを見つける。
ケースには「UCHISE」というローマ字と天体観測所のステッカーが貼られている。
巧「宇宙キチガイで旅行やらカメラやらで、金ばっかり使ってたって」
圭子がケースを見ている。

○内瀬家/外観(夜)
巧が帰ってくる。

○同/居間(夜)
巧がテレビを見ている。
パジャマ姿の内瀬裕美(48歳)が入ってくる。
裕美「写真、撮れた?」
巧「全然。でも、売れるよ」
裕美「え?」
巧「公園でさ、天文マニアのおばさんから声かけられてさ、話するうちに、それ売ってくれって」
裕美「ほんとに?」
巧「ほんとに運が良くてさ、ちょうど公園まで、月食、見に来てて、偶然」
裕美「あんな古いカメラを欲しいって?」
巧「うん」
裕美「ホント、宇宙好きはモノ好きが多いんだって、父さんも毎週、毎週、空、見に行ってさ、母さんも苦労したんだから」
巧「ま、いいじゃん、その人、今度、金持ってくるってよ」

***回想***

○公園(夜)
冒頭と同じ公園。
三脚の上に一眼カメラがセットされている。
一眼カメラは冒頭のカメラと同じタイプである。
内瀬弘(41歳)がファインダーを覗き込んでいる。
弘が顔を上げる。
弘「もうすぐ、全体が隠れる」
弘の隣に唯野圭子(31歳)が立っている。
弘が優しく圭子の肩に手をかけ、圭子いファインダーを覗き込ませる。
圭子「こういう月も綺麗」
圭子が顔を上げる。
弘と圭子が月を見あげる。
弘が圭子の手を握る。
弘「今度、話をする」
圭子「え?」
弘「妻に」
圭子が無言のまま月を見ている。
弘が圭子の手を握る。
圭子が握り返す。
弘「いいね」
圭子が弘の肩に頭を寄せる。
弘「かぐや姫
圭子が嬉しそうに微笑む。
足元には「UCHISE」というローマ字と天体観測所のステッカーが貼られているケースが置かれている。

***回想終わり***

○公園(夜)
唯野圭子(41歳)が明るく光る月を見上げている。

解放パンデミック

※本シナリオ登場人物の台詞は各国の言語で交わされ、日本語以外の言語は字幕によって説明される。

○アメリカ国防相/外観(昼)
テロップ「解放 一日目」

○同/オフィス内(昼)
スタッフが慌ただしく動いている。
オフィスに入ってきたスタッフAが周りのスタッフに話しかける。
スタッフA「どうした?」
スタッフB「イスラム国が声明を出した」
スタッフC「強硬路線を変更、中東諸国との平和会談を要求。手始めに人質は順次解放する。そういう内容だ」

○砂漠(昼)
テロップ「解放 二日目」

○集落(昼)
砂漠にある集落。

○家屋/室内(昼)
砂漠にある集落内の家屋。
小窓から外光が差し込むだけの薄暗い室内。
頭から袋を被され、手足を紐で縛られた男Aがベッドに転がっている。
ドアが開く。
男Aの体がビクッと動く。
外からアラブ系の男性3人が入ってくる。
男Aが体を動かし、うめき声をあげる(口をタオルで塞がれている)。
アラブ男性Aが英語で話しかける。
アラブ男性A「心配するな、解放する」
男Aが体を動かし、うめき声をあげる。
アラブ男性B「静まれ!」
男Aの動きが止まる。
アラブ男性A「移動の時、お前には眠っていてもらう。麻酔注射を打つ、心配するな、何日か経てば、お前はロンドンにいるだろう」
アラブ男性Cがケースから麻酔注射を取り出す。
アラブ男性A、Bが男Aの体を押さえる。
アラブ男性A「大丈夫、心配するな」
アラブ男性Cが男Aの腕に麻酔を打つ。

○砂漠(昼)

○家屋/室内(昼)
アラブ男性A、Bに体を押さえられた男Aが寝息を立てている。
アラブ男性Bが男Aの頭に被せた袋を取る。
男Aは眠っている。
アラブ男性Bは、アラブ男性Cに合図を送る。

○家屋前の道路(夕方)
アラブ男性Bが男Aを担いでいる。
男Aの頭には袋が被せられている。
アラブ男性Bが男Aを車に乗せる。
男Aは眠ったままのようで動かない。

○中東/市街地(昼)
テロップ「解放 三日目」

中東国の市街地。
生活する人々にあふれた活気ある町並み。
男Aがフラフラとした足取りで道を歩いている。
男Aが壁に手をついて立ち止まり、正気を取り戻そうとしている。
男Aは手をついて場所が飲食店の入り口であることに気づき、中に入る。

○飲食店/店内(昼)
男Aが入ってくる。
店員たちが男Aを不思議そうに見る。
男Aが英語で大声を出す。
男A「助けてくれ、アメリカ大使館、アメリカ大使館に連絡を」
男Aが膝から倒れ落ちる。

○ニュース番組
テロップ「解放 四日目」

日本のニュース番組の画面。
男性キャスター「イスラム国が解放した人質は日本人、江畑信二さんを含む合計14名。アメリカ人が3名、イギリス人が2名、フランス人2名、ドイツ人1名、ロシア人1名、中国人3名、ブラジル人1名の人質となっています。人質を保護した各国大使館職員の証言をまとめますと、全員は中東諸国の異なる地域で解放されており、イスラム国の拠点が各国に点在しているのかについては、まだ確認はとれていません。では、ここで解放された江畑さんが日本大使館で行った会見も模様をご覧下さい」
映像が海外からの取材映像に切り替わる。
映像は日本大使館で行われた会見の模様。
記者A「解放された際の記憶について教えて下さい」
江畑信二(36歳)が答える。
江畑「全く覚えていません」
記者B「他の国の人質に証言ですと麻酔を打たれて気を失ったまま、街中に放置されていたということですが、江畑さんの場合は」
江畑「同じです。視界を遮られた状態で、体を押さえられて、注射のようなものを打たれたと思ったら、その後はアンクシャッドに」
記者A「人質に取られていたときのことは」
江畑「全く分かりません」
記者B「場所や雰囲気は」
江畑「頭から袋を被せられてましたから」

◯成田空港/ロビー(昼)
テロップ「解放 七日目」

江畑がマスコミに囲まれ取材を受けている。
江畑「ゴホッ(咳)、すみません、ちょっと疲れてるもんですから、風邪気味で。そろそろ、いいでしょうか?」
記者C「最後に質問いいですか?」
江畑「ゴホッ、なんでしょう」
江畑の取材が続いている。

◯総合病院/待合室(昼)
テロップ「解放 九日目」

大勢の患者たち。
江畑がダルそうに問診を待っている。
江畑を見つけて、皆が話しかけるが、江畑には対応する元気がない。

***逆回転の映像***
今までの光景が逆回転で流れる。

○砂漠(昼)
テロップ「解放 二日目」

○家屋/室内(昼)
男Aがベッドで眠っている。
アラブ男性Cが医療用マスクをし、医療用の手袋をはめる。
アラブ男性A、Bが距離を置いて見ている。
アラブ男性Cがケースからメスを取り出し、男Aの口の中を切る。
アラブ男性Cがメスを置き、ケースの中から小瓶を取り出す。
小瓶には赤い液体が入っている。
アラブ男性Cがガーゼをピンセットで掴み、赤い液体に浸す。
アラブ男性Cがガーゼを男Aの口の中(メスで切った箇所)に当てる。

***逆回転の映像***
光景が逆回転で流れる。

◯アフリカ/郊外(昼)
テロップ「解放 五日前」

家の周りで黒人男女が泣いている。

◯家屋/室内(昼)
ベッドの上に黒人男性が横になっている。
黒人男性の体内から血が滲んでいる。
黒人男性は、わずかに息をしているだけで覇気がない。
防護服を着た男が医療用器具を使って黒人男性の血液を採取している。

 

山鳴り

○坂田家/ベランダ(昼)
二階建て住宅の二階にあるベランダ。
坂田紀子(16歳)が遠くを見ている。
紀子が見ている先に山々が連なっている。
ゴーという山鳴りの音。
山鳴りの音が次第に大きくなる。
女性の声「紀子」
紀子が我に返る。
山鳴りの音が消える。
紀子が振り向くと、部屋の中から坂田敏江(43歳)が話しかけている。
敏江「なにしてるの?」
紀子「ん、とくに・・・」
紀子が部屋に入る。

○坂田家/外観(夜)

○同/紀子の部屋(夜)
紀子がパソコンに向かっている。
紀子はブログを書いている。
ブログには「大竹山から変な音」というタイトルで、紀子の部屋から見える山の写真と「山の方からゴーという音が聞こえる。この写真には写っていない、ずっと奥にある山、大竹山から聞こえてくるようだ」という内容のテキスト。
画面フェイドアウト。

○同/居間(昼)
画面フェイドイン。
居間には坂田弘幸(45歳)と、山中伸也(32歳)と加藤健一(38歳)が向き合って座り、弘幸の後ろに隠れるように紀子が座っている。
山中「(弘幸に)おじさん、ネットの世界じゃ、凄い話題になってるんだから、神だ、天才だって。これビックチャンスだよ、利用しない手はないよ」
弘幸「しかし」
山中「紀子ちゃんにしかできない能力なんだから、正しく使うべきだって。人助けにもなるんだよ、(紀子に)ね」
紀子が弘幸の後ろに隠れる。
山中「無理言って来てもらった加藤さんはね、東北の地震を予言したっていう占い師をプロデュースしてる実績があって、その占い師なんて、今じゃ月額1000円のウェブ会員を1万人確保してるんだよ、それだけで月1000万円。紀子ちゃんなら、もっとイケるよ、テレビとか本とか色々出ればさ」
加藤「霊能家、スピリチュアル・カウンセラー、プロデュース実績があります、信頼して下さい」
山中「ほら、ね」
弘幸が振り向いて紀子の方を見る。
紀子が首を横に振る。
弘幸「紀子が、イヤだと言ってる以上はねぇ」
加藤「紀子ちゃん、今度、私がプロデュースしている心霊家の先生に会いませんか?」
紀子が弘幸の後ろに隠れたまま答える。
紀子「あれ、私じゃないんです、学校で噂になってた話で・・・」
山中「え?」
紀子「本当です」
山中と加藤が顔を合わせる。
加藤「いや、もう誰が言い出したかなんて関係ないんだ、今、ネットの世界で求められているのは、あのブログの作者なんだから。紀子ちゃんという存在を求めているんだよ」
紀子「すみません!もう帰って下さい!」
弘幸「伸也君、紀子も、こう言ってるんだから、もう引き取ってもらえないかな」
山中が不服そうな顔をして、加藤に返ろうという合図をする。

○同/外観(夜)
山中と加藤が小声でやりとりをしならが足早に去っていく。
揉めているようである。

○同/居間(夜)
紀子と弘幸と敏江がお茶を飲んでいる。
紀子「今の人、どういう人?」
弘幸「(敏江に)紀子は、柿沢のおばさんの葬式の時、いなかったっけ?」
敏江「いたかもしれないけど、覚えてないわよ、もうだいぶ前の話でしょ」
紀子が首をかしげる。
弘幸「そうか・・・。婆ちゃんの妹の子供、(敏江に)それ以来かな?」
敏江「東京かどっかにいるっていって、集まりにも顔出してなかったし」
紀子「ふーん」
敏江「驚いたよね、突然やってきたと思ったら、急にあんな話し始めて」
紀子「あの人からも変な音がした」
敏江「よしなさい、そんなこと言うのは」
弘幸「また、戻ってくるぞ」
敏江「あんた子供の頃から、たまに変なこと言う子だったけど」
紀子「冗談よ、冗談」
弘幸「悩み事とかあるんだったら、ちゃんと言えよ、ストレスで変な音が聞こえるとかっていうぞ」
紀子が笑う。
紀子「もう、変な風に言うのやめてよ。なにも聞こえません、なにも見えません」
弘幸「うちの会社でも、鬱で休んでる新人いるんだよな」
紀子「違うって!」
紀子、弘幸、敏江が笑っている。
画面フェイドアウト。

○同/台所(朝)
画面フェイドイン。
紀子(21歳)がリクルートスーツ姿で食パンを食べている。
廊下から敏江が電話で通話している音声が聞こえている。
敏江の会話は深刻な雰囲気。
敏江が通話を終えて、台所へ入ってくる。
紀子「なにかあったの?」
敏江「いや、うん」
紀子「なに?」
敏江「後でいいでしょ。今日の面接、頑張りなさい」
紀子「教えてよ。教えてくれないと、気になって面接に身が入らないから」
敏江が一息つく。
敏江「何年か前にウチに来た、柿沢のおばさんの息子って覚えてる?」
紀子「突然、人を連れて来た人?」
敏江「そう、昨日、警察から連絡があって、山の中で見つかった白骨死体が、その人なんだって」
紀子「え?」
敏江「もう何年も連絡とれなかったんだって」
紀子「ウチに来たのって、いつだっけ」
敏江「ウチに来た後くらいから、行方不明だったみたい」

○同/玄関(朝)
紀子が靴を履いている。
敏江が廊下を歩いてくる。
敏江「さっきのことは忘れて、面接頑張って」
紀子「うん、今日はうまくいきそう」
紀子が玄関を開ける。
玄関の外は明るい光。
紀子が空を見あげる。
外は快晴である。
紀子が何かに気づいた表情。
紀子が振り向く。
紀子「折りたたみ取って」
敏江「いらないでしょ」
紀子「用心した方がいいかなって」
敏江が折りたたみ傘を紀子に渡す。
敏江「予報も0%よ」
紀子「持っていきたいのよ。(傘をしまって)いってきまーす」
紀子が出ていく。

野良犬

○ワンボックスカー/車内(昼)
走行中の車内。
運転席に鈴木淳也(38歳)、助手席に佐藤真一(38歳)、後部席に近藤直樹(37歳)、望月弘(38歳)が座っている。
真一「なかなか、おらんもんやなぁ」
直樹「こないだ、見たような気がするんやけどなぁ」

○車道(昼)
ワンボックスカーが町中を走っている。

○ワンボックスカー/車内(昼)
淳也「うわ、ここ、マンション建っとる、この辺、金井のウチあったところやろ?」
直樹「立ち退きで、だいぶ金もらったらしいよ」
淳也「掘ったて小屋みたいな家やったよな」
真一「(直樹に)ほんとに、この辺で見た?こないだって、いつや?」
直樹「忘れたわ、半年くらい前?」
弘「頼むよ、地元に住んどるん、お前しかおらんのやから」
弘が胸元のポケットからタバコを取り出す。
淳也がルームミラーで弘を見る。
淳也「おい、タバコ」
弘「ええやん、タバコくらい」
淳也「ん〜吸うんやったら、窓開けて、窓の外で吸って。夕方、これ乗って親戚んトコ行くんやから、カミさんからガタガタ言われるの嫌や、もう」
弘「弱いなぁ」
真一が助手席の前に並べられた、子供用アニメのぬいぐるみを手にとる。
真一「パパのお願い聞いてくだちゃい、飼い犬パパのお願いでちゅ〜」

***回想***

○居酒屋/店頭(夜)
「本日のご予約」というプレートに「市ノ瀬高校 平成7年度卒業生同窓会」の文字。

○同/座敷席(夜)
淳也、真一、直樹、弘が飲んでいる。
直樹「ええやん、遊び放題やろ」
弘「ダメ、最近は景気悪いし、金が続かん」
真一「もう行ってないん?」
弘「そりゃ、行くときは行くどさ」
直樹「月に何回くらい?」
弘「週イチ?」
真一「行きまくっとるやん!」
淳也「ええなぁ」
弘「(淳也に)最近は?」
淳也「家のローンもあるし、子供もまだ小さいし、金がかかるんよ」
真一が淳也の肩を叩く。
真一「自由になれ、俺みたいに」
淳也「慰謝料と養育費でスッカラカンになるのだけは勘弁や」
淳也が笑う。
真一「修羅場を味わってみぃ、金払ってでも別れようと思うって!」
淳也「直樹、お前も結婚しろ」
直樹「無理や」
弘「彼女おるんやろ?」
直樹「でも、親がおるし、足腰不自由やろ、面倒見てくれっていったら逃げ出すわ」
真一「(弘に)する気ないやろ?」
弘「遊び人に家庭は似合わん」
弘が笑う。
淳也「久々やけど、みんな、変わってないね、安心したわ」
直樹「チーム”ノライヌ”」
真一「うわ、懐かしい!忘れとった」
弘「市ノ瀬の風」
淳也「自分たちで名乗っただけやん」
真一「俺と直樹なんか、スクーターやったし」
直樹「親を病院連れてく時にさ、蒲谷峠通って行きよったんやけど、あそこ通る度に思い出しよったよ」
真一「病院って、大貫の?」
直樹「総合病院、あ、そうや、そこのナースに吉岡おってさ」
弘「吉岡って、四中の?ヤリマン吉岡?」
淳也は話に加わらず、何かを考えている様子。
直樹「そう、吉岡陽子」
真一「患者とヤリまくりよるんやないん?」
弘「ベッド、そこら中にあるし」
真一「性病になっても医者が治してくれるやろ」
直樹「それがさぁ」
淳也が口を開く。
淳也「明日、暇?」
直樹「ん?」
真一「どしたん?」
弘「吉岡とやりに行く?」
淳也「違うわ、ドライブ行かん?」
真一「病院まで?」
淳也「違うって、チーム”ノライヌ”で走らんかって話」
真一「バイクないし」
弘「俺、電車で帰ってきたもん」
淳也「俺の車で」
直樹「男四人で?」
弘「むさ苦しいわ」
淳也「車、ワンボックスやし広いよ」
真一「ファミリーカーやん」
直樹「家族で帰ってきたん?」
淳也「ああ」
弘「でも、どこ行くん?面白くないやろ、この辺、走っても」
直樹「あ、俺、ダメや、3時にヘルパー来るし」
淳也「俺だって、夕方に親戚のトコに行かんといけん」
真一「どうする?昼間?」
弘「なんか見に行く?」
直樹「見たいトコある?」
淳也「なんかテーマない?」
真一「宝探しするとか」
淳也「なんそれ」
弘「ならナンパしようぜ」
真一「お前だけはノライヌ時代から全然変わってないな」
直樹「野良犬は」
淳也「野良犬?」
真一「今もおるか?野良犬」
直樹「この間、見たんよ、千間川の辺で」
弘「なんで、おっさん四人で野良犬探さないかんの」
淳也「面白いやん」
真一「チーム”ノライヌ”やろ」
直樹「(弘に)お前は車の中から女見とけ」
真一「メス犬でも」
淳也「決まり、野良犬探そ」

***回想終わり***

○ワンボックスカー/車内(昼)
真一「チームで旗作ったの、覚えとる?」
淳也「そんなん、あった?」
直樹「うっすら、覚えとるわ」
弘が窓の外に顔を出しタバコを吸っている。
真一「最後、誰か持って帰った?」
淳也「あったか、旗って?」
直樹「あったよ」
真一「ノライヌって、弘のウチで辞書見ながら、全部漢字でさぁ」
淳也「漢字?どんな?」
真一「ノラは野球のヤと良い悪いのラ」
淳也「ホントに?」
直樹が携帯(ガラケー)を取り出し、漢字を確認する。
直樹「もっかい言って、野球のヤと」
淳也「お前、まだガラケー?」
真一がスマホを取り出す。
真一「あ、充電忘れた」
車が信号で止まる。
淳也がスマホを取り出し、操作する。
信号が青に変わる。
淳也が真一にスマホを渡す。
淳也「ググって」
真一がスマホを見ると、家族写真が待ち受けになっている。
真一「なんや、マイホームパパぶって」
真一がスマホを操作する。
真一がスマホの画面を淳也に見せる。
真一「ほら」
淳也が画面を見る。
画面には「野良」の文字。
直樹も覗き込む。
直樹「イヌは、犬猫のイヌ?」
真一「どうやったっけ?違うやろ」
直樹が弘の肩を叩く。
弘がタバコを口にしたまま振り向く。
淳也「窓の外で吸えって!」
弘「いいやん、これくらい」
淳也「頼む、後で俺が怒られるんやから」
真一「完全に尻に敷かれとるな」
直樹「ノライヌの旗って覚えとる?」
弘がタバコを外に捨てる。
弘「なんか作った記憶あるな」
直樹「どんな漢字やった?」
弘「ヌは抜くのヌやなかった?」
真一がスマホを操作する。
淳也「おった!」

○川原(昼)
横たわっている野良犬。
淳也、真一、弘、直樹が、ゆっくりと野良犬に近づく。
直樹は手にスナック菓子を持っている。
淳也「ほら、こっち来い、エサやるぞ」
野良犬が立ち上がる。
真一「動いた」
弘「(直樹の耳元で大声で驚かすように)ワン!」
直樹「(驚いて)うわ!」
野良犬「(威嚇するように)ワン!」
野良犬が吠えながら四人の方へ走ってくる。
四人が逃げる。
淳也「(直樹に)投げろ!」
直樹がスナック菓子を投げ捨てる。
野良犬が菓子に気を取られ、進路を変える。

○川原の上(昼)
川原を見下ろせる場所。
淳也、真一、弘、直樹が川原をみている。
川原で野良犬がスナック菓子を食べている。
直樹「怖かったぁ」
真一「腹減っとたんかな」
淳也「ハングリーやな」
弘「よう見とけ、あれが、あの頃の俺たちや」
淳也「なにカッコつけとんの」
四人は微笑みながら野良犬を見ている。

あの日から

○山間(昼)
山間、車が一台通れる程の道。
桜庭啓介(28歳)が自転車を押しながら登っている。
啓介には無精髭、疲れた表情を浮かべている。
啓介の自転車はママチャリで、カゴの中には空になったペットボトル数本と地図帳が入っている。

○道(昼)
啓介が登っている道の端に畑。
啓介が畑仕事をしている香坂八重(70歳)を見つける。
啓介「すみませーん!」
八重が手を止めて啓介を見る。
啓介がペットボトルを手に持って話しかける。
啓介「この辺りに川か井戸ありますか?」
八重が笑顔を浮かべて近づいてくる。
八重「どっから来たの?」
啓介「東京から」
八重「東京から!水ならウチにおいでなさい。食べ物は?」
啓介「いや・・・」
八重「食べてきな」

○八重の家/外観(昼)
山間の小さな一軒家。
近くには壊れかけた廃屋が数軒ある。
ムシャムシャと食事をかきこむ音。

○同/台所(昼)
啓介が、ご飯と漬け物をむさぼるように食べている。
八重「そんなに急がんでも」
啓介が水を飲み干す。
啓介「生き返った〜、3日前にポテトチップを食べて以来です」
八重「どうなっとるの、そっちは?」
啓介「こっちは?こっちも揺れました?」
八重「そりゃ揺れはしたたけども、東京の方が凄かったって」
啓介「ええ、もう何もかも壊れて、止まってます、電気も、水道も」
八重「ここも、そうよ、テレビも映らんし、ラジオも聞こえんし、なんもわからん」
八重が電話を見る。
電話は旧式のプッシュホンである。
八重「電話も止まってしもうて」
啓介「2日ねばったんですけど、地震が続くばっかりで、復旧の気配もないし、こりゃ田舎に帰ろうって」
八重「田舎は、どっち?」
啓介「上沢です、魚津の」
八重「魚津!わぁ、まだまだあるよ」
八重が柱時計を見る。
時刻は午後3時。
八重「今日は泊まってきなさい、じきに日が暮れる、先は長いんだから」

○同/庭(夕方)
八重と啓介が焚き火を使って炊飯を行っている。
啓介「前の道を通って避難する人、いませんでしたか?」
八重「あぁ、一昨日やったかなぁ、家族で下ってきよったよ」
啓介「下って?新潟の方から?」
八重「裏日本も、ひどく揺れたっていうて」
啓介「田舎の方、大丈夫かなぁ」

○同/台所(夜)
八重がロウソクの火をつける。
啓介「ロウソク・・・、東京だとロウソク1本も奪い合いになってて」
八重「ロウソクが?」
啓介「電気がないでしょ、電池も売り切れて、火がないと」
八重「はい、座って」
啓介と八重がイスに座る。
啓介「いただきます」
啓介と八重が食事を始める。
八重「田舎は自給自足できるしね」
啓介「魚津に戻ろうと思ったのも、それで。東京は、なんでもかんでも奪い合いで、住んでた練馬っていうも田舎だと思ってたんですけど、そこも、そんな状態で」
八重「練馬?練馬やったら、香坂晋平って知らんね?」
啓介「いえ・・・」
八重「ウチの息子が出てってきりでね、一回、ハガキが来たら、確か練馬って」
八重が立ち上がり、電話台の引き出しを開ける。
八重がハガキを取り出す。
ハガキは古く黄ばんでいる。
八重がハガキを見ながら話す。
八重「最後に戻ってきてから、もう10年以上も音沙汰のないんよ」
啓介がハガキをのぞき込むと、住所には「豊島区」の文字。
啓介「豊島区ですか・・・」
八重「練馬とは違うの?」
啓介「まぁ、隣の区ですけど・・・、豊島区はビルも人も多い街で」
八重がじっとハガキを見ている。
啓介「でも、練馬の方まで避難してきてた人もいましたよ」
八重がハガキを見ながら話す。
八重「仕事があるんだって、家を出てってから、何をしとんのやろ」
啓介がハガキを見ながら話す。
啓介「これ、だいぶ前の住所ですよね、もうここにはいないかもしれないし」
八重「無事なんやか・・・」
啓介が食事を続ける。

○山間(朝)

○八重の家/家前(朝)
啓介と八重が立っている。
啓介の自転車のカゴには水の入ったペットボトルと紙袋。
啓介「助かります、食事までもらって」
八重「魚津まで、持てばいいけど」
啓介「これだけあれば、なんとかなりますよ」
啓介が自転車のスタンドを倒し、押し始める。
八重「裏日本も無事やったらいいけど」
啓介「そうですねぇ・・・」
八重「気ぃつけて」
啓介「ありがとうございました」
啓介が八重の家を後にする。
八重が啓介の後ろ姿を見ている。

敬老の日

○渡辺家/玄関前(昼)
築50年以上はありそうな木造家屋。
手提げ袋を持った加藤佐江子(29歳)が玄関前で立ち止まる。
佐江子が表札を確かめる。
表札には「渡辺トシ」の名前。
佐江子が玄関のブザーを押そうとするが、ためらう。
佐江子は、少し考えて、立ち去っていく。

○山田家/外観(昼)
鉄筋二階建ての住宅。

○山田家/玄関内(昼)
佐江子が手提げ袋から紙袋を取り出す。
紙袋には「百歳記念品 小松川市役所」の文字。
佐江子「おめでとうございます」
佐江子の紙袋を山田洋子(68歳)が受け取り、山田ウメ(100歳)に手渡す。
洋子「良かったねぇ、おばあちゃん、市役所から記念品だって」
ウメ「あぁ?」
佐江子が洋子とウメのやりとりを見ながら微笑んでいる。

○中田家/居間(昼)
佐江子が景品を渡している。

○広石家/玄関内(昼)
佐江子が景品を渡している。

○渡辺家/玄関前(夕方)
空は薄暗くなっている。
佐江子が立ち止まっている。
佐江子が少し動いて家の中の明かりを確かめるが、点灯していない。

***回想***

○路上(朝)
住宅街の路上。
佐江子がスマホで地図を見ている。
佐江子が首を傾げている。
自宅の前を掃除している中年女性に声をかける。
佐江子「あの、すみません」
中年女性「はい」
佐江子「市役所の者なんですけど、西町の4の13というのは、この辺りで・・・」
中年女性「13は、一本向こうの道になると思いますけど、ちょっと待ってね」
中年女性が玄関を開けて、家の中に話しかける。
中年女性「お父さん、西町の4の13って高塚さんの家の方だよね」
佐江子「あ、いえいえ、結構です。そこまで分かれば」
中年女性「あ、そう」
中年女性が手提げ袋を見る。
佐江子「敬老の日の記念品なんです、100歳以上のお年寄りの方に」
中年女性「100歳」
佐江子「ええ、渡辺さん、トシさんが100歳で」
中年女性「渡辺さん?今も、いるの?」
佐江子「どこかに移られました?」
中年女性「いや、ここ2、3年、見かけてないから、前も町内で噂になったのよ」
佐江子「ご家族は?」
中年女性「お子さんも先に亡くなって、一人暮らしだったからね」
佐江子「ヘルパーさんとか、お世話をする方は?」
中年女性「なんか、前に、出入りしてる親戚みたいな人がいたみたいだけど、ご近所さんが、おばあちゃんお元気ですかって、声をかけたら、怒鳴られたとかって」
佐江子「本当ですか?」
中年女性「今、多いじゃない、お年寄りの年金が欲しいからって、家の中で、役所に知らせずに」
佐江子「はい・・・」
中年女性「イヤ、渡辺さんは無事かもしれないけどね」
佐江子が怪訝な表情を浮かべる。

***回想終わり***

○渡辺家/玄関前(夕方)
佐江子が玄関ブザーを押そうとする。

○イメージ映像
布団の中にミイラ化した女性の死体。

○渡辺家/玄関前(夕方)
佐江子が玄関ブザーを押すのをためらう。

○路上(夕方)
佐江子が歩いている。

○河川(夕方)
河川が歩いている。
手提げ袋の中身は空になっている。

○市役所/オフィス内(朝)
佐江子が座っている。
上司が出勤してくる。
上司「昨日は、お疲れさん。どうだった、そっちは?」
佐江子「問題なく」
上司「そう、良かった」
佐江子が何とも言えない微笑みを浮かべる。